ピックアップ

はじめに戻る

「木の音をきく」の挿絵を描いたクリスティーナ・ロウヒを訪ねて

2012.10.9


クリスティーナ・ロウヒ  アトリエで

クリスティーナ・ロウヒ  アトリエで

クリスティーナ・ロウヒ  自宅で

クリスティーナ・ロウヒ  自宅で

木の音をきく 猫の言葉社 2012

木の音をきく 猫の言葉社 2012

リーッタ・ヤロネン 文  クリスティーナ・ロウヒ 絵 TAMMI 1994

リーッタ・ヤロネン 文
クリスティーナ・ロウヒ 絵
TAMMI 1994

リーッタ・ヤロネン 文  クリスティーナ・ロウヒ 絵 TAMMI 2010

リーッタ・ヤロネン 文
クリスティーナ・ロウヒ 絵
TAMMI 2010

リーッタ・ヤロネン 文  クリスティーナ・ロウヒ 絵 TAMMI 2012

リーッタ・ヤロネン 文
クリスティーナ・ロウヒ 絵
TAMMI 2012

2012年9月、日本語版「木の音をきく」の見本を携えて、クリスティーナ・ロウヒの家を訪ねました。ヘルシンキから電車で30分ほどのヤルヴェンパーに住んでいます。陶芸家や映画製作者などアーティストばかりの5世帯の家が繋がる建物です。庭のリンゴの木にたくさん実がなっていました。

3人の子どもたち(36歳、30歳、26歳)がもう家を出たので、今はグラフィックデザイナーの夫と二人暮らしです。夫は美大時代の同級生。同じく同級生に「サンタクロースと小人たち」でおなじみのマウリ・クンナスもいたというのですから、天才ぞろいの学年だったのでしょう。

アトリエは窓が大きくて、光がたくさん差し込みます。「いろいろな物を集めるのが好きなの」と、小さなかわいいものを見せてくれました。アトリエの壁には細かい仕切りのある棚があって、小石が並んでいます。昔の写植の活字が入っていた入れ物だそうです。植木鉢には、割れたコーヒーカップの破片などを入れて、とってあるのですから、思い出をいつまでも大切にする人なのでしょう。

このアトリエで、数々の愛らしい絵が生まれたかと思うと、この空間に立てた幸せを感じました。ここ10年くらい、クリスティーナは、卵黄を使ったテンペラ画を描いているそうです。

ベルリンへ出かける直前だったので、荷造りの途中でしたが、入れる荷物を広げてある2階の部屋にも案内してくれました。絵から受ける印象と同じく、とても静かで優しい人です。

クリスティーナのキャリアは、教科書の挿絵から始まりました。「自由に描いていいのよと編集者に言われたので、とてもやりやすかった。そのうち絵本も手掛けるようになったけど、うちにも小さい子どもがいたから、若いお母さん方がどんな本を求めているか、気持ちがよくわかったわ」と、クリスティーナ。

フィンランドで優秀な児童書の挿絵に贈られるルドルフ・コイヴ賞を受賞し、2回も「最も美しい本」に選ばれるなど、フィンランドで人気も実力もある絵本作家、イラストレーターです。「木の音をきく」を書いたリーッタ・ヤロネンは、「絵はどうしてもクリスティーナ・ロウヒに描いてほしい」と思ったそうです。そして、出来上がった絵をリビングの床に全部並べてみると、「まさに、本の世界にぴったりだった」と、リーッタが言っていました。「木の音をきく」で、リーッタ・ヤロネンとクリスティーナ・ロウヒの二人ともがフィンランディア・ジュニア賞を受賞したのです。

リーッタ・ヤロネンの児童書は、すべてクリスティーナが挿絵を描いています。楽しい絵やかわいい絵を描く人は他にもいますが、クリスティーナのように美しい世界、深い世界を表現できる人はめったにいません。「木の音をきく」は、リーッタ・ヤロネンの香り高い文学に、クリスティーナ・ロウヒの息をのむほど美しい絵がついたのですから、幸運な出会いといえるでしょう。

「フィンランドでは、何かあったとき、子どもとよく話をします。そういうときは、本を使うといいのね。この『木の音をきく』は、そういう話し合いのときに親子で使うのにふさわしい本だと思うわ」と、クリスティーナは語っていました。

インタビューが終わり、クリスティーナの家から帰ろうとすると、急に雨が降ってきました。しばらくすると、雨上りの澄んだ空にきれいな虹がかかっていました。(稲垣美晴・記)

(この記事の文章および写真を無断で使うことを禁止します。©猫の言葉社)

このページの先頭へ