ピックアップ
「フィンランドの小人たち トントゥ」誕生から復刊まで
2010.4.6
「フィンランドの小人たち トントゥ」が、フィンランドで刊行されたのは1979年です。この本で、マウリ・クンナスは絵本作家としてデビューしました。
そもそもどうしてトントゥに興味を持ったかというと・・・・・・。
ある時、マウリが、妻タルヤの父親と話をしていて、クリスマスのトントゥって、いったいなんだろう、どんな歴史があるのだろう、ということになりました。タルヤの母親は図書館の司書でしたから、すぐにトントゥの研究書(マルッティ・ハーヴィオ著)等を数冊借りてマウリに渡しました。
すぐにマウリは、トントゥで子供の本ができると確信します。しかし、トントゥの伝説は田舎に伝わるものが多く、町で育ったマウリには、わからないことがたくさんありました。そこで、本を調べ、田舎で暮らしたことのある父親の助けを借り、博物館に通って、トントゥの本の構想を練りました。
そして、トントゥの絵を携え、出版社OTAVAの児童書編集長を訪ねます。すぐに「本にしましょう」とは言われませんでしたが、絵を預けてきました。すると、ある日、テレビの子供番組のプロデューサーから電話があったのです。
「OTAVA社で、君のトントゥの絵を見たんだ。あれで、トントゥ・シリーズの番組を作りたいのだが・・・・・・」
まさに「神様からの贈り物」でした。テレビ用に100枚以上の絵が必要になります。マウリは、来る日も来る日もトントゥの絵を描き、タルヤが彩色の手伝いをしました。こうして、マウリのトントゥは、1978年の秋にテレビで放映されたのです。たくさんの子供たちがテレビのトントゥ・シリーズに親しんでいたので、翌1979年に本が出ると、もちろん大ヒットになりました。
書評でも歓迎されました。
「ここに登場するトントゥたちは、あまりにも生き生きと描かれているので、もしかしたら、かつて本当に存在し、これからもまだどこかにいるかもしれない、という気がしてくる」(ヘルシンギン・サノマト紙)
「マウリ・クンナスは絵の大家だが、文章においてもなんら遜色がない」(トゥルン・サノマト紙)
20年以上前の話になりますが、「僕の本が売れるのは、フィンランド中のトントゥが喜んで応援してくれるからだと思う」と、マウリが真顔で(!?)言っていたのを思い出します。
マウリ・クンナスの絵本は多くの言語に翻訳されて、現在約30カ国で読まれています。1982年に日本で刊行された「フィンランドのこびとたち トントゥ」(稲垣美晴訳・文化出版局)は、なんと、クンナスの絵本翻訳第1号だったのです。フィンランドの文化を正確に楽しく伝えるこの本は、日本でも多くの子供たちに愛されました。
最近も読者の方からお話をうかがう機会がありました。
「子供の頃、うちにもトントゥがいるかしらと思って、おかゆを階段に置いておいたことがあります」
「『むかしむかし、おばあさんのおじいさんのおかあさんが、まだ、ぽっちゃりほっぺの小さな女の子だったころ、どこの家にも守り神が住んでいました』この本の出だしは、娘たちが小さかった頃に何度も読み聞かせをしたので、20年たった今でもよく覚えています。・・・・・・クンナスの絵本を3代にわたって読むのが夢です」
多くの読者の皆様からご声援を頂戴し、「フィンランドの小人たち トントゥ」を復刊することができました。感無量です。フィンランドのトントゥたちが、読者の皆様のご家庭にも、たくさんの幸せをもたらしてくれますように! (稲垣美晴・記)
(この記事の文章および画像を無断で使用することを禁じます。(C)猫の言葉社)