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「カイサのふうせんガム大さくせん」作者インタビュー

2009.5.11


作者サムリ・ヴァルカマ(C)Samuli Valkama

作者サムリ・ヴァルカマ(C)Samuli Valkama

「カイサのふうせんガム大さくせん」 猫の言葉社

「カイサのふうせんガム大さくせん」 猫の言葉社

(C)Samuli Valkama

(C)Samuli Valkama

(C)Samuli Valkama

(C)Samuli Valkama

作者 サムリ・ヴァルカマ(青字テキスト)
訳者 稲垣美晴(黒字テキスト)

フィンランドの出版社の編集長から「カイサのふうせんガム大作戦」を頂いたとき、「カイサって、日曜日の朝の、まだ髪をとかしてない日本人の女の子みたいね」って言ったのを覚えているわ。濃い色の髪(フィンランド人の金髪に比べて)、黒い目・・・・・・私にそっくり。どうして私がこの本の主人公なんだろうって、不思議に思ったの。(笑)カイサって、私たち日本人にとって、なじみやすい容姿だし、とてもたくましいタイプね。

カイサが日本人に見えるって、本当!? 面白いね。考えてもみなかった。カイサ誕生のきっかけはね・・・・・・。あるとき、退屈な話を聴いていて、メモ帳の隅に、風船ガムで空を飛んでる人を描いていたんだ。退屈な話から飛んで逃げようと・・・・・・。そのイタズラ書きが、長い間僕の心から離れないで、とうとう本になったっていうわけなんだ。

今、世界的な不況だし、ちょうどカイサのような元気な女の子が必要ね。ヨハンナ・ミトヨネンも書評(ソネラ・プラザ)で、「長くつ下のピッピのいとこ!?・・・・・・カイサは21世紀の少女達の素晴らしい理想像」って書いているでしょ。

カイサは、初めから、冒険好きで機知に富む性格にしようと思ったんだ。児童文学に、もっとこういう元気者の女の子が必要だと思って。

カイサとロボットおばあさんの関係もいいわね。カイサがおばあさんを手伝ってあげて、おばあさんが若返る・・・・・・ステキなふれ合い・・・・・・。特にいいなと思ったのは、次のやり取り。

「おばあさん、どうして腰を曲げて歩くの?」
すると、おばあさんはこう言った。
「あるとき、クッキーを床に落としたの。腰を曲げて、あちこち探していたら、クッキーは見つかったんだけど、腰を伸ばすのを忘れてしまったのね。そのうち、まっすぐに立とうと思っても、もうできなくなったっていうわけ」

ユーモラスなこの返事は素晴らしいと思うの。私の母(89歳)は、いつも愚痴をこぼしているのよ。「友達が次々に亡くなったり、老人ホームに入ったりして、もう近所に知り合いがいなくなった」って。ロボットおばあさんのように、小さい子ども達の質問に楽しく答えられたら、たくさんかわいいお友達ができるのにね。ロボットおばあさんのモデルはいるの?

カイサとおばあさんの関係についての君のコメント、うれしいな。ありがとう。ロボットおばあさんはね、ユーモアのあるお年寄り像を創造したいっていう夢から生まれたんだ。年を重ねるってことが、ユーモアを解する心を失うことになってはいけないと、僕は思う。僕のおばあさんは二人とも、“スーパーナイス”だったけど、一般的には、お年よりは皆、真面目だって、若い頃は思ったね。でも、必ずしもそうではないよ。勇気を出して自分よりもずっと年上の人たちと親しくなろうと努力しなくちゃいけないんだ。他人に対する先入観について、そして、それに打ち勝つことについても「カイサのふうせんガム大さくせん」に書いたんだ。

このお話は、構成がダイナミックで、とても上手くできているけど、書くことはどうやって学んだの? たくさん本を読んだ? どんな本や作家が好き?

子どもの頃大好きだったのは、フランス人作家ルネ・ゴシニのユーモラスな「プチ・ニコラ」シリーズと、アストリッド・リンドグレーンの本。僕は、6歳で本が読めるようになったんだ。お母さんがリンドグレーンの「山賊の娘ローニャ」を僕に読んでくれたんだけど、すごーくゆっくりだった。僕は、話の続きが早く知りたいと思っているのに・・・・・・。それで、自分で読む必要ができたっていうわけ。この二人の作家は、僕に、そして、僕の仕事にも大きな影響を与えたと思う。

絵本は、すごく若いときから作りたいと思っていたんだ。これは、マウリ・クンナスの影響。彼の絵本はすごいよね。僕の祖母が、マウリ・クンナスのお母さんと知り合いだったとかで、時々プレゼントにサイン入りの本をもらったんだ。サインのそばに小さな絵も描いてくれたんだよ。そういうのを見たら、やる気になるよね。

ちょっと話がそれるけど、僕が憧れている映画人の一人に、宮崎駿がいる。彼の映画は全部見た。「千と千尋の神隠し」は、もう10回くらい見たと思うな。彼の作品でも、女の子が不思議な所を冒険するよね。彼も、「長くつ下のピッピ」が好きだって、何かに書いてあったよ。

コンピュータで描く挿絵については、慣れていない人もいるし、好き嫌いがあるかもしれないけど、あなたの意見を聞かせて!

最近は技術がもうずいぶん発達したから、絵を見ても、手で描いたのか、コンピュータを使っているのか、分からないくらいなんだ。僕はこの頃、WACOMのペンタブレットを使っている。つまり、コンピュータに接続しているタブレットの上に描く。すると、そこに描いた線が、そのままコンピュータの画面で確認できる。次のカイサの本は、このやり方で描いているんだ。すごく解放された感じがする。手描きのタッチが、そのまま苦労なく使えるわけだから。

「カイサのふうせんガム大さくせん」を作っていた頃は、ベクター画像(物の輪郭を線で表した画像)の鮮明さが気にいっていた。勢いがあって、新しい感じがしたんだ。

手描きの絵のほうを評価する人、コンピュータの絵のほうが好きな人、両方いると思うけど、僕は、両方とも理解できる。最近は、両方の世界の長所を一つにできたらいいと思うし、できると信じたいね。

本の最後に、カイサが次の作戦を考えているでしょ。プリンと輪ゴムとワニ1匹使う作戦。読者は、本当にその作戦を期待すると思うけど・・・・・・

そうだったね。次の本のテーマにいいかもしれない。でも、もう、次の本を作っているんだ。カイサがクローゼットから象を見つけて、いっしょにピクニックに出かける話。想像力のパワーを感じる本になると思うよ。フィンランドで、2009年秋に刊行予定。

今からとても楽しみね!

(この記事の文章および画像を無断で使用することを禁じます。(C)猫の言葉社)

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