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「なかなおり」の作者 ヘルヤ・リウッコ=スンドストロム

2011.3.7


(c)エスコ・ヤムサ(撮影)+猫の言葉社

(c)エスコ・ヤムサ(撮影)+猫の言葉社

「なかなおり」の原書 2008年 KIRJAPAJA

「なかなおり」の原書 2008年 KIRJAPAJA

最初の絵本 1977年 OTAVA

最初の絵本 1977年 OTAVA

フィンランド政府児童文化賞受賞作 1981年 OTAVA

フィンランド政府児童文化賞受賞作 1981年 OTAVA

「なかなおり」の作者ヘルヤ・リウッコ=スンドストロムは1938年生まれ。フィンランドを代表するセラミック・アーティストです。ヘルヤは、美大を卒業した1962年からフィンランドの製陶会社ARABIA(現在の社名はIITTALA)のデザイナーを務めているので、来年は50周年という記念の年になります。


左の写真はアラビアのアトリエです。「なかなおり」の挿絵に使った陶板は、このアトリエで生まれました。ヘルヤの後ろに「なかなおり」の陶板が並んでいます。前にいるのが孫のヴィオラちゃんと友達のティンティ君。この二人も「なかなおり」のお話を聞いて陶板を作りました。アラビアのアトリエには外国からのVIPの訪問もありますが、ヘルヤは、王族であっても子供であっても、誰でも分け隔てなく温かく迎えるのです。


「なかなおり」はヘルヤの8冊目の絵本。この本は2008年にToi rusakkoという題でKirjapajaから出版されました。人間に飼われている白うさぎたちが、かわいいドレスを着て、アイススケートの練習をしています。それを見た野うさぎのルサは、仲間に入りたくて知恵を絞ります。ようやくルサもアイススケートの仲間に入れてもらえますが、そのことを面白く思わない白うさぎがいたのです・・・・・・。ヘルヤのお話には、いつも社会問題が盛り込まれています。今回は、社会のあちこちに存在する「差別」が取り上げられました。


ヘルヤがはじめて陶板を挿絵とする絵本を作ったのは1977年。一作目の「ヘルヤの優しいお話集」には3つのお話が入っています。子供たちのためにお母さんが作った動物のぬいぐるみのお話。年老いた猫が天国へ行くお話。そして、全自動の洗濯機を買ったために捨てられた古い洗濯機が、また拾われて役に立つお話です。どれも、息をのむほど美しい陶板の挿絵がついています。


国際障害者年にあたる1981年に「私たちみんなが必要とされています」というテーマで作った陶板絵本「地平線のかなたまで」(稲垣美晴訳・CBSソニー出版・現在絶版)は、後ろ足に障害があって跳べない子うさぎが、強い前足を使って安らぎの木に登ったり、亀との友情を深めたりするお話です。この作品は、点字を施した陶板も制作して巡回展を行いました。この展覧会は本とともに、フィンランド政府児童文化賞を受賞し、国際的にも高い評価を得ました。


ヘルヤには、1994年にフィンランド政府よりプロフェッサーの称号、2001年には全業績に対して、アーティストとして最高の名誉であるプロ・フィンランディア・メダルが授与されました。(稲垣美晴・記)〔本ホームページ上の文及び画像の無断転載を固く禁じます。〕

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